いつも傍に。

(本文は、2019年10月に音楽文に投稿した文章です。)

関ジャニ∞」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか?

 

関ジャニ∞ジャニーズ事務所所属のアイドルグループである。メンバーは横山裕村上信五丸山隆平安田章大、そして最年少の大倉忠義

今となってはだが、MC業に徹する者、舞台に勤しむ者、演出に力を発揮する者―と、メンバーそれぞれが各々の分野で活躍をし、デビュー15周年を迎えた今年行われた5大ドームツアー「十五祭」(じゅうごさい)で観客総動員数1000万人を突破した。

とはいえ、1000人規模のキャパも埋められなかったり、事務所から支給されたグリーン車のチケットを払い戻して夜行バスで東京大阪間を行き来し、浮いたお金でご飯を買ったり、スタジオ帰りにビール一杯とたこわさ一つでどこまで酔えるかを競ったり、パチンコの出玉チャンピオンになったり、アルバイトで生活費を稼いでいたような過去を持つのも関ジャニ∞というアイドルだ。

そんな時代を経て、「浪花いろは節」を発表し、8人でデビューを切った2004年の僅か1年後、メンバーの内博貴が脱退してから長らく7人で活動を続けてきた。

そして、2018年7月に渋谷すばるが、2019年9月に錦戸亮ジャニーズ事務所を退所、即ち事実上グループからの脱退は、ことさら関ジャニ∞、ジャニーズに詳しくない方でもご存知ではないだろうか。

渋谷すばる錦戸亮は言わずと知れた関ジャニ∞のメインボーカルであり、関ジャニ∞の音楽面を支えていたのに違いはない。

渋谷すばるの事実上の脱退と共にスタートを切った2018年の5大ドームツアーGR8EST(ぐれいてすと)では、渋谷のパートの多くを錦戸と安田、そして時に丸山が歌い継いでいた。幾度となく鼓膜に蘇る渋谷の歌声を、目の前の6人の歌声に重ねて涙が流れた人も多いと思う。

とりわけ渋谷のパートであった大阪ロマネスクの象徴的な歌い出しを6人全員で歌っているのはeighter(※ファンの総称、命名は渋谷)誰しもの心に深く残っていることだろう。

錦戸に関しては、2010年にリリースされた関ジャニ∞初のバンドシングル「LIFE~目の前のむこうへ~」をシングルカットするべくレコード会社に掛け合ったり、自身も尊敬する斎藤和義や関ジャム完全燃SHOWにて繋がりを持ったさだまさしに楽曲の提供を依頼するなど、グループの音楽性の方向を常に意識し行動していた人物だ。錦戸自身も作詞に作曲、編曲を手掛け、関ジャニ∞に数多くの楽曲を提供をしてきた。彼の制作曲はファンの間でも「信頼と実績の錦戸」言われるほど人気のある楽曲が多い。

また、今や関ジャニ∞の魅力の1つであるバンドでは、渋谷はギターとブルースハープを、錦戸は主にリズムギターを担当し、関ジャニ∞というバンドにおいても二人の音は非常に大きな存在だった。

私はeighterとしてここ数年彼らを追いかけてきた。楽曲が発売となればCDの予約、フラゲはもちろん、歌番組の録画、可能な限りのリアルタイム視聴、そしてひたすらに楽曲を聴き続ける。

朝起きてまずスピーカーの電源を入れ音楽をかける。移動中はイヤフォンから音楽を流す。

寝ても覚めても、年がら年中脳内には関ジャニ∞の楽曲が流れていると言っても過言ではない。

彼らの音楽は生活の一部どころか生きていく上で無くてはならないものである。

 

その楽曲は実にバラエティに富んでいて、「デビュー曲が演歌だから」の一言でまとめるにはもったいないほどだ。

彼らのパブリックイメージに合う、明るくポップな曲。拳を高々と突き上げ、声の限り叫ぶ曲。踊りまくるダンスナンバー。スタンドマイク1本で魅せるバラード。しっとりと耳で酔いしれさせる大人の曲。どこか哀愁漂う雰囲気が堪らない歌謡曲。少し残念な男の子の切なくもどこかクスっとしてしまう恋の曲。彼らの出身・大阪を舞台にした雅なるラブストーリー。おんぼろでもかっこいい希望の歌。「30代あるある」が詰め込まれた腹筋崩壊必須の愉快な曲。桜を連想する出会いと別れを歌う曲。ファンとひとつになる曲。出会えたことが嬉しくて何だか涙があふれてくる曲―。

上げれば枚挙にいとまがない。

また、錦戸のことを先述したが、錦戸のみならずメンバーそれぞれが作詞、作曲を手掛けることも多々あり、メンバーの個性がいかんなく発揮されるのも彼らの楽曲の魅力と言える。

 

前置きが長くなったが、そんな関ジャニ∞43枚目のシングル、「友よ」が2019年10月27日にリリースされた。ジャニーズ事務所の同期である生田斗真主演「俺の話は長い」の主題歌である。

生田斗真関ジャニ∞はジャニーズJr時代からつながりがあり、年齢こそ違うが入所がほぼ同じ横山や村上とは事務所の同期以前に「友達」という関係があるような仲。関ジャニ∞はこれまでも2度生田主演映画の主題歌を担当してきたが、ここへきて『友よ』というタイトルのシングルを主題歌に起用されたことは双方のファンにとって「エモい」以外のなにものでもないのだ。

「なぁ友よ 人生って最高だろう? だからやめられないんだろう」

安田章大ののびのびとどこまでも果てしなく響く歌声で始まるこの曲。

思えば1年と少し前に6人でスタートを切った時も出だしは安田の歌声だった。あの時と同じなのは偶然なのだろうか。

彼の声の裏に響くアコースティックギターの音色、そこから一気に広がるエレキギターの音色に、より一層の力強さを感じる。

「ダセぇ人間と笑われるのはいい くだらねぇ人間と呼ばれるは腹が立つ

たかだが一画面くらいの文字数で人を簡単に定義するなバカヤロー」

「腹が立つ」「バカヤロー」とマイクを通して、公共の電波に乗せて届ける「アイドル」が今までいただろうか。

「答え無き時代に揺るぎない覚悟 夢見て打ちのめされてまた夢を見るんだ

なぁ友よ

人生って最高だろう?

だからやめられなんだろう」

「人生」に答えなど存在しない。生きていると夢を持つ。だが、夢に向かって努力しても、夢が叶わないこともある。いや、本当に叶えられるのなんてほんのひと握りの人間だろう。それでも夢を持つ。それが人間という生き物だ。そしてそんな夢に向かって、一度覚悟を決めた者はその道を信じて進む。それもまた「人生」だ。そんな甘くもあり、そしてほろ苦い人生、「最高だろう?だからやめられないんだろう。」

個人としても、グループとしてもこれまでたくさんの紆余曲折があった人生。メンバー全員が30代半ばに差し掛かり、長らく一緒に歩んできた仲間との別れを経たこの2年。更には、彼らにとっての「人生の父なる存在」とも言える人物との別れを経験した2019年。そんな今、彼らが歌うこのフレーズは、何と切なく、何とアツいんだろう。そして何と彼らにふさわしいのだろうか。初めて音楽番組で聴いた10月下旬、様々な想いが涙となって体外に溢れ出た。

 

さて、主題歌となっているドラマ「俺の話は長い」のエンディングでは楽曲の1番が使用されているが、フラゲ日にCDを購入し、初めてフルコーラスで聴いたとき、紛れもなくこれは今の関ジャニ∞自身に歌っていると確信した。

「心安らげる場所なんて永遠じゃねぇ そんな時感じるべきは孤独じゃない決意だ

何熱くなってるんだ いい歳こいて・・・って齢にかまけて己を曲げてたまるか!」

ここで少し話を脱線させてもらいたい。関ジャニ∞の楽曲に『元気が出るSONG』という楽曲がある。(2015年11月11日リリース「関ジャニ∞の元気の出るCD!!」に収録)メンバー7人で詞を紡ぎ、メロディーを歌い繋いでできた珠玉の1曲だ。その中にこんな歌詞がある。

「笑ってる君の隣に僕は居たくて

楽しそうなその横顔ずっと見ていたくて

やわらかな空気が運ぶこの時間が

永遠に続けなんて願わないから 

せめてあと少しもう少しだけ」

『元気が出るSONG』というタイトルと、彼らの持つ明るいイメージにしてはこの歌詞は少し違和感を覚えるかもしれないが、決してマイナスな意味はなく、この瞬間に7人が感じたことが素直に書かれている。楽曲の制作風景はCDの初回限定盤に特典としてついており、そこで彼らの「想い」も確認できる。(余談だが、楽曲制作に至ったのは、「元気が出る夏休み」と称して行われた一泊二日の7人旅の終盤、とあるカフェで食事をしている最中に「曲を作りたくなってきた」という錦戸亮の一言に発端する。)

そして曲の最後はこんな風に纏まっている。

「笑ってる僕の隣にはいつも君がいた

嬉しそうな僕を見て君はまた笑った 

不確かな日々に潜んだ確かな今を

明日も明後日もずっと繋いでいこう

いつか永遠と呼べるまで」

話を本線に戻すが、『友よ』のこの歌詞を聴いたとき、この『元気の出るSONG』が脳裏を過った。

「いつか永遠と呼べるまで」と歌っていた彼らが「心安らげる場所なんて永遠じゃねぇ」と歌う今。「永遠」も「絶対」もこの世の中には存在しないとわかってしまった今、一見残酷にも感じるこの歌詞。しかし、「そんなときに感じるのは孤独でもなく決意だ」と正々堂々胸を張って歌いきるのが関ジャニ∞というアイドル。続けて「己を曲げてたまるか!」とどストレートに蹴散らすのが何とも彼ららしい。歌詞こそ標準語ではあるが、「いやぁ、いい歳こいて自分ら何熱くなっとんねん、なんて言われてもなぁ?」「年齢なんて関係あらへんがな!」「熱くてもええやんけ!」「せやせや!!」「もっといけ!!」という5人の言葉がどこからともなく聞こえてくる気はしないだろうか。

「時になぁなぁ怠け散らす 天邪鬼すぎる俺たちが

泥にまみれても成し遂げたいものは

自分を変えてくれた“憧れ”への恩返しだったりするんだよ」

2019年のライブ「十五祭」の終盤のVTRで大倉は「最年少として15年間このグループに居させてもらったが、やっぱえげつないっすね関ジャニ∞。みんな好き勝手言うし、不器用でぶつかってばかりいる。裏では最低で最弱な時もある。」と言っていた。彼らもアイドル以前に1人の人間である。時に怠けるときがあって当たり前だろうし、素直じゃない時だってあるだろう。そんな彼らだが、10代の頃から「ジャニーズ事務所」という世界に居て、ひとりひとりに「憧れ」と呼べるような人が居るはずで、そして人情味があって、あったかくて、お世話になった人たちに対する誠意を忘れない彼らにとって「恩返し」というある種の「テーマ」は、きっとこの数年を経て、この道を選んだ今、彼らの中にものすごく大きな面積で存在しているのだと思う。

それを「泥にまみれても成し遂げたい」なんて、関ジャニ∞に怖いくらいぴったりすぎやしないだろうか。「嗚呼、一体全体どこまで泥臭く、倒れても倒れても立ち上がるんだ君たちは。」と見ているこちらとしては何回も心奮い立たされるのである。

「不甲斐無き時代に図太く誓いを 汗も恥もかくくらいなんてことぁないんだよ」

1番では「答え無き時代」だったのが、2番では「不甲斐無き時代」に、「覚悟」は「誓い」となり、「夢見て打ちのめされてまた夢を見る」人生には「汗も恥もかくくらいなんてことないんだ。」と言わんばかりに1番と2番の歌詞の流れも美しい。

間奏にはエレキギターののびのびと歌うフレーズが非常に印象的だ。

そしてラストフレーズ。

「君が見る時代に惜しみない愛を

やんややんやとわめき散らしながら思いのままに生きてやれ!

なぁ友よ  

人生って最高だろう?

だからやめられなんだろう」

そうなのだ、愛を忘れないのも関ジャニ∞だ。わめき散らしながらも「惜しみない愛」を持って生きていくこと。それもまた人生の醍醐味だと彼らを見ていると本当に思う。

 

曲中、幾度となく繰り返される

「なぁ友よ 人生って最高だろう?だからやめられなんだろう」

「君」に向けてでもなく、「あなた」に向けてでもなく、「友よ」と呼びかけるこの曲。

 

さて、ここで最初の問いに戻りたいと思う。

関ジャニ∞」と聞いて私が今、思い浮かべるのは「傍に居てくれるアイドル」だ。

「傍に居てくれる」と「アイドル」を並列するなんて、こいつ頭イカれているぜ!と思われるかもしれない。だがそれを正しいと思わせてくれるのが関ジャニ∞という「アイドル」なのである。

実に不思議な感覚なのだが、彼らの言葉は時に家族や友人、学校の先生、職場の同僚、先輩よりもすんなりと心に入ってくることがある。

例えば直に会うことができる年に一度のライブ。関ジャニ∞のライブは底抜けに楽しい。明日のことなんて気にしないくらいに楽しい。それでも終わりの時間はやってくる。彼らとのお別れの時間が近づくにつれどんどん寂しさが大きくなる。そんなとき彼らはこう言う。

「また次会うまで頑張ろうな!お互い笑って生きていこうな!」と。

この日のためにファンが仕事、学校、家事、その他を頑張って頑張って頑張って来ているのを分かってて、それでいて「俺らも頑張るからな!」というスタンスでポンっと背中を押してくれるのだ。

口で「頑張れ」と言うのは簡単だ。だが、「頑張ろうな!」と言えるのは本当に頑張っていないとなかなか言えない。そして関ジャニ∞は頑張っている姿をも私たちに包み隠さず見せてくれる。楽器に苦戦するところ。振りが覚えられなくて何度も何度も繰り返し練習するところ。タイトスケジュールの中、欠くことなく更新してくれるブログ。いいものを作りたいという一心で本気でぶつかり合う打ち合わせ。

そんな彼らを見ていると、絶対に届くはずのない人達なのに何故だかすごく「傍に」感じてしまうのだ。

関ジャニ∞に出会って、eighterになって、全国にたくさんの「友」が出来た。あの子もあの子もあの人も、関ジャニ∞を好きになっていなければ人生で一度も会うことなく死んでいったのだろうと思うとゾッとする。

ともに笑い、時に涙し、ボロボロになりながらも前も向き、そしてまた笑う。

それはeighterとだけではなく、関ジャニ∞と、でもある。

いつだって「人生」というステージの上に全員で並んでいる関ジャニ∞はやっぱり最高で最強だ。 

 

なぁeighter、関ジャニ∞って最高だよ。

だからやめられないんだ。